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ブックラバー宣言

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2018年 11月 18日 ( 1 )

弾けた文体の辛口記事〜『仕方ない帝国』

●高橋純子著『仕方ない帝国』/河出書房新社/2017年10月発行

b0072887_9463520.jpg 著者の執筆当時の肩書は朝日新聞の政治部次長。肩書とのギャップを感じさせる今風のカジュアルな弾けた文体がひとつの持ち味といえそうだ。もっとも内容以前にそこが非難の的になったりもしているようだが。

 論題はさまざまだが、あえてキーワードを一つピックアップするなら「自由」ということになるだろうか。自由をめぐって自由を求めて思考し行動する著者のすがたが本書の随所ににじみ出ているように思う。自由の観点からすれば、安倍政権の強権的政治も、上司のマウンティングも、世間の掟も、おしなべて批判や懐疑の対象となる。もちろんその基本姿勢に異存はない。

 後半に収録されているインタビューは人選に明確なコンセプトが感じられず、良くも悪しくも多方向からオピニオンを汲み取ってくる新聞の性格を反映している。白井聡や片山杜秀らの発言は彼らの著作を読んでいる者にはほとんど新味はないが、そのなかで特定秘密保護法案に賛同した長谷部恭男との丁々発止のやりとりは読み物としては面白い。

 ただそれにしても、こうして本になったものを読んでみると、紙面で読んだ時と比べてなんだかインパクトが薄まったように感じられるのは何故だろう。紙面では他のありきたりな文体で書かれた記事の中で、彼女独特の文体が異彩を放っているように思えたものだ。しかしこうして一冊の書籍となると、比較の対象となるのは彼女の同僚記者の退屈な文章ではなく、世界に広がるあまたの本となる。このようなスタイルの文章なら、あのコラムニスト、この作家の方が……となってしまうのは避けがたい心理なのか。読者というのはまことに勝手な存在なのである。
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by syunpo | 2018-11-18 09:47 | 政治 | Comments(0)